最新のGoogle Pixel 10が発売されましたが、「Pixel 10のゲーム性能は悪いのか」という疑問を持つ方が多いようです。
新しいTensor G5のスペックやベンチマーク結果を見ると、CPU性能は向上しているものの、Googleがそもそもゲーム性能をアピールしていないこともあり、ゲームには不向きとの評価が目立ちます。
特に高負荷時に発熱することも指摘されており、最新技術のレイトレーシング非対応という点もゲーマーにとっては気になるところでしょう。
人気の原神やゼンゼロではゲームに不具合も報告され、中にはできないゲームもあるのが実情です。
この記事では、Pixel 10のゲームに関する性能を多角的に分析し、その実力を徹底解説します。
Pixel 10のゲーム性能が悪いのか?スペックから徹底検証
- 新チップTensor G5のスペックと性能
- ベンチマークスコアに見る実力
- CPU性能は向上しているがGPUは課題
- 最新技術のレイトレーシング非対応
- 高負荷時に本体が発熱する問題点
新チップTensor G5のスペックと性能

Google Pixel 10シリーズの性能を決定づける心臓部には、第5世代となる自社開発SoC(System on a Chip)「Tensor G5」が搭載されています。
このチップの設計思想は一貫しており、一般的な処理能力の追求よりも、AI(人工知能)や機械学習のタスクを高速に実行することに主眼が置かれています。
前世代までのチップとの大きな違いは、製造を担うファウンドリ(半導体受託製造企業)の変更です。
今回から、世界最先端の半導体技術を持つTSMC(台湾積体電路製造)の3nmプロセスで製造されることになりました。
理論上、これにより電力効率が大幅に向上し、パフォーマンスの持続性も改善されると期待されていました。
しかし、ゲーム性能を語る上でより重要なのは、GPU(グラフィック処理装置)アーキテクチャの刷新です。
Tensor G5の技術的な特徴
製造プロセス: TSMC 3nmプロセス
CPU: アプリ起動や基本操作の快適さを担保するため、パフォーマンスは前世代から着実に向上。
GPU: 主流のARM社製Mali GPUから、採用例が非常に少ないImagination社のPowerVRアーキテクチャへ変更。
AI処理: Googleの強みであるTPU(Tensor Processing Unit)の性能は大幅に向上し、AI機能のレスポンスが高速化。
特に注目すべきは、GPUの変更です。
これまでのARM Mali系からImagination社のPowerVR系GPUに切り替わったことで、ソフトウェアとゲーム側の最適化が全く追いついていないという深刻な問題が発生しています。
世界のモバイルゲーム市場は、Qualcomm社のAdreno GPUとARM社のMali GPUが大きなシェアを占めており、ほとんどのゲームはこの2つのGPUで快適に動作するように開発されています。
そのため、市場シェアの低いPowerVR GPUでは、本来のハードウェア性能を十分に引き出せないケースが頻発するのです。
これは、カタログスペックの数字だけでは見えてこない、実用上の大きな課題と言えます。
ベンチマークスコアに見る実力

スマートフォンの性能を客観的な数値で比較できるベンチマークテストは、Pixel 10の立ち位置を明確に示しています。
結論から言えば、そのスコアは「10万円を超えるハイエンドモデルとしては物足りない」という評価でほぼ固まっています。
例えば、スマートフォンの総合的な性能を測定する「AnTuTu Benchmark (v10)」のスコアは、海外のレビューサイトなどで約114万〜140万点と報告されています。
これは、前モデルであるPixel 9 Proの約122万点から微増、あるいはほぼ同等レベルであり、世代交代としての進化幅は非常に小さいです。
特に、競合となるQualcomm社の最新チップ「Snapdragon 8 Elite」を搭載したスマートフォンが軒並み200万点を超えるスコアを記録していることを踏まえると、その性能差は歴然です。
モデル名 | 搭載チップ | AnTuTu v10 スコア(参考値) | 特徴 |
---|---|---|---|
Pixel 10 Pro | Tensor G5 | 約1,400,000 | AI性能特化、GPU性能は低い |
Pixel 9 Pro | Tensor G4 | 約1,220,000 | 前世代モデル |
Galaxy S25 | Snapdragon 8 Elite | 約2,330,000 | バランスの取れた高性能 |
Xiaomi 15 Ultra | Snapdragon 8 Elite | 約2,600,000 | 最高クラスの性能 |
さらに深刻なのが、グラフィック性能を専門に測定する「3DMark」などのテスト結果です。
ここでもTensor G5は競合に大きく劣るスコアしか出せていません。
複数の検証結果を総合すると、Pixel 10のGPU性能は、数世代前のミドルレンジスマートフォンと同等か、それ以下という厳しい現実が浮かび上がります。
ゲームの快適さに直結するGPU性能の低さこそが、Pixel 10がゲームに不向きと言われる最大の根拠なのです。
CPU性能は向上しているがGPUは課題

前述の通り、Pixel 10に搭載されているTensor G5は、CPU性能そのものは着実に向上しています。
Googleの公式発表によれば、CPUパフォーマンスは前世代から34%改善したとされており、これは日常的な利用シーンにおける快適さに直接貢献します。
例えば、アプリの起動速度、ウェブサイトの読み込み、SNSのスクロール、複数のアプリを切り替えながらの作業など、ゲーム以外のほとんどの操作は非常にスムーズで、ストレスを感じることはないでしょう。
しかし、スマートフォン全体のパフォーマンスは、CPUとGPUがバランス良く連携して初めて発揮されるものです。
パフォーマンスのボトルネックとは
スマートフォンの性能は、最も能力の低い部分に引っ張られる傾向があります。
これを「ボトルネック」と呼びます。
3Dグラフィックスを多用するゲームにおいては、GPUがそのボトルネックになりがちです。
いくらCPUが高性能で命令を素早く処理できても、最終的に映像を描画するGPUの能力が低ければ、フレームレート(1秒間の描画コマ数)は上がらず、結果としてカクつきや遅延が発生します。
Tensor G5は、AI処理に特化したTPU(Tensor Processing Unit)には多くのリソースを割いていますが、GPU性能は明らかに軽視されています。
この「AIファースト」という独自のチップ設計思想が、一般的なハイエンドスマートフォンにユーザーが期待する「あらゆる用途で高いパフォーマンスを発揮する万能性」との間に、埋めがたい溝を生んでいるのです。
最新技術のレイトレーシング非対応

近年のPCおよび家庭用ゲーム機の世界では、グラフィックのリアリティを飛躍的に向上させる技術として「レイトレーシング」が標準となりつつあります。
これは、光の挙動を物理的に正しくシミュレートし、リアルな反射や影、光の差し込みを表現する技術で、モバイルゲームの世界にもその波が訪れています。
Qualcomm社のSnapdragon 8シリーズなどの最新ハイエンドSoCは、すでにこのレイトレーシングをハードウェアレベルで高速に処理する機能を内蔵しています。
これにより、対応ゲームではスマートフォンの画面とは思えないほど没入感の高いグラフィック体験が可能になります。
しかし、Pixel 10に搭載されているTensor G5は、このハードウェア・アクセラレーテッド・レイトレーシングに非対応です。
もちろん、レイトレーシング非対応だからといってゲームが全くできなくなるわけではありません。
しかし、10万円を超える価格帯の最新スマートフォンが、次世代のグラフィック標準技術に対応していないという事実は、特にゲーム好きのユーザーにとっては大きな失望点です。
今後、この技術を活用した魅力的なゲームが増えていくことを考えると、Pixel 10はわずか1〜2年で技術的に時代遅れになってしまうリスクを抱えています。
この仕様からも、GoogleがPixel 10を、最先端のゲーム体験を追求するデバイスとして設計していないことが明確に見て取れます。
高負荷時に本体が発熱する問題点

チップの絶対的な性能が低いにもかかわらず、重い処理を無理に実行しようとすると、回路に過剰な負荷がかかり、本体が発熱しやすくなります。
そして、残念ながらPixel 10もこの発熱問題から逃れることはできていません。
複数の実機レビューで、ゲームプレイ中の顕著な発熱が報告されています。
特にグラフィカルな3Dゲームをプレイすると、数分で本体背面、特にカメラバー周辺が暖かくなり始め、高い負荷が続くと「サーマルスロットリング」という自己防衛機能が作動します。
サーマルスロットリングの仕組みと影響
サーマルスロットリングとは、電子部品が熱によって恒久的なダメージを受けるのを防ぐため、システムが意図的にチップの動作クロックを下げ、性能を抑制する仕組みです。
ゲームプレイ中にこれが起こると、以下のような悪影響が現れます。
- フレームレートの急落: それまで安定していた画面が、突然カクカク、ガクガクになる。
- 操作遅延の発生: キャラクターの動きや反応が鈍くなる。
- バッテリー消費の加速: 高温状態はバッテリーの化学反応を不安定にし、通常より早く電力を消費する。
海外のテックメディアAndroid Authorityが行ったストレステストでは、Pixel 10 Proが高負荷をかけるとわずか数分でパフォーマンスが大きく低下し、最終的な安定性能は前モデルと大差ないという結果も出ています。
長時間の安定したゲームプレイを望むユーザーにとって、この熱問題は致命的な欠点となり得ます。
Pixel 10のゲーム性能が悪いのか?実際のプレイ感を解説
- そもそもゲーム性能をアピールしていない
- なぜPixelはゲームには不向きと言われるのか
- 人気の原神やゼンゼロではゲームに不具合も
- 最低要件を満たせずできないゲームもある
- まとめ:Pixel 10のゲーム性能が悪いのか?
そもそもゲーム性能をアピールしていない

Pixel 10のゲーム性能を評価する上で、最も重要なのは「Googleの視点」を理解することです。
結論から言えば、GoogleはPixelシリーズをゲーミングデバイスとして位置づけておらず、その性能をプロモーションの主軸に据えたことは一度もありません。
Googleの公式発表や製品ページ、テレビCMなどを注意深く見ると、一貫してアピールされているのは以下の点です。
- AIによる高度な画像処理を実現した「魔法のようなカメラ機能」
- 会話をリアルタイムで翻訳・文字起こしする機能
- 写り込んだ不要なものを消去する「消しゴムマジック」
- ユーザーの状況を先読みして情報を提供するAIアシスタント
これらはすべて、独自開発のTensorチップが持つ強力なAI処理能力(TPU)によって実現されています。
つまり、Pixelとは「最先端のAIソフトウェア体験を届けるためのハードウェア」なのです。
ユーザーの期待と製品コンセプトの乖離
問題は、その価格設定にあります。
Pixel 10シリーズは、最も安価なモデルでも10万円を超え、上位モデルは10万円台後半に達します。
この価格帯は、AppleのiPhoneやSamsungのGalaxyといった、あらゆる用途で最高の体験を提供することを謳う「万能型フラッグシップ」がひしめく激戦区です。
そのため、多くの消費者は「この価格なら、当然ゲームも最高レベルで快適にできるはずだ」と期待してしまいます。
このユーザーの期待と、Googleが提供する「AI特化」という製品コンセプトとの間に存在する大きな乖離が、「Pixelは価格の割に性能が悪い」という不満の根本的な原因となっています。
なぜPixelはゲームには不向きと言われるのか

Pixelがゲーム用途に推奨されない理由は、単一の問題ではなく、これまで述べてきた複数の技術的・戦略的な要因が複合的に絡み合った結果です。
改めて、その理由を深く掘り下げて整理してみましょう。
Pixelがゲームに不向きな3つの本質的理由
- GPU性能の絶対的な不足
最大の理由は、純粋なハードウェア性能の低さです。同価格帯の競合製品が搭載するSoCと比較して、3Dグラフィックスを描画するGPUの能力が決定的に劣っています。これにより、特にグラフィック設定を高くすると、安定したフレームレートを維持することが物理的に不可能です。 - ソフトウェア(エコシステム)の最適化問題
モバイルゲーム開発の世界は、市場シェアの大きいQualcommのAdreno GPUとARMのMali GPUを中心に回っています。開発者も限られたリソースの中で、より多くのユーザーが使う環境で快適に動作するよう最適化を行います。採用例が皆無に等しいImagination社のGPUを搭載したPixel 10は、このエコシステムの外側にいるため、ゲームアプリ側から「後回し」にされがちで、パフォーマンスが出ない、あるいは不具合が起きやすいという状況に陥っています。 - ハードウェア設計と冷却能力の限界
Pixelシリーズは、ゲーミングスマホのように高性能な冷却システム(ベイパーチャンバーなど)を搭載していません。そのため、持続的に高い負荷がかかると発生した熱を効率的に排出できず、すぐにサーマルスロットリングが発生します。これにより、安定した長時間のゲームプレイは極めて困難です。
これらの理由から導き出される結論は、「Pixel 10はカジュアルなパズルゲームなど軽いゲームなら問題ないが、高いパフォーマンスを要求される3Dゲームを快適にプレイするための設計にはなっていない」ということです。
人気の原神やゼンゼロではゲームに不具合も

理論上の性能だけでなく、実際の人気ゲームタイトルでPixel 10がどのような挙動を示すのかは、購入を検討する上で最も気になるポイントでしょう。
特に、スマートフォンに要求されるグラフィック性能の指標ともなっている「原神」での動作は、その実力を測る上で格好の材料となります。
複数の実機レビューを総合すると、Pixel 10で原神をプレイした場合、デフォルトのグラフィック設定は「中」程度に自動設定されることが多いようです。
これを手動で「最高」設定に引き上げることは可能ですが、その場合、戦闘シーンなど負荷の高い場面ではフレームレートが30fpsを大きく下回り、快適なプレイは望めません。
さらに、GPUの最適化不足に起因するとみられる、テクスチャの表示がおかしくなるといった描画の不具合が起きる可能性も指摘されています。
開発元も言及する互換性の問題
この問題は、単なる性能不足だけではありません。
原神の開発元であるmiHoYoは、公式サイトで公開している推奨スペックに関する情報の中で、「PowerVRアーキテクチャのGPUでは互換性の問題が発生する可能性がある」と具体的に言及しています。
Pixel 10がまさにこのPowerVR系のGPUを搭載しているため、これは単なる偶然ではなく、構造的な問題である可能性が高いことを示唆しています。
同じくmiHoYoが手掛け、美しいグラフィックが特徴の最新作「ゼンゼロ(ゼンレスゾーンゼロ)」についても、原神と同様に高いGPU負荷がかかることが予想されます。
そのため、ゼンゼロを快適にプレイしたいと考えているユーザーにとっても、Pixel 10は残念ながら最適な選択肢とは言えないでしょう。
最低要件を満たせずできないゲームもある

Pixel 10のゲーム性能に関する問題は、単に「動作が重い」「カクつく」といった快適性のレベルに留まらない、より深刻なケースも存在します。
それは、一部のゲームでは、そもそも起動するための最低動作要件を満たしていないと判定されてしまうことです。
実際に、リアルなグラフィックが特徴のレーシングゲーム「GRID Legends」をPixel 10にインストールしようとすると、Google Playストア上で「お使いのデバイスはこのバージョンに対応していません」と表示されるか、インストールできても起動時に「最低要件を満たしていません」というエラーが出てプレイできないことが確認されています。
これは、ゲーム側が特定のGPU機能(APIレベルなど)や、一定以上の性能を動作の必須条件として設定しているために起こります。
いくら最新のスマートフォンであっても、この条件をクリアできなければ、門前払いされてしまうわけです。
「10万円以上もする最新フラッグシップモデルなのに、遊びたいと思っていたゲームが起動すらしない」という事態は、消費者にとって受け入れがたいものでしょう。
もちろん、全てのゲームでこのような問題が起きるわけではありません。
しかし、購入前に、自分がプレイしたい特定のタイトルがPixel 10で問題なく動作するかどうか、SNSやレビューサイトで情報を収集しておくことは、後悔を避けるために非常に重要です。